M&A(事業承継)の際の注意点とは?

企業法務

近年、中小企業の後継者不在問題の解決策として、M&A(事業承継)の件数は年々増加しています。
譲渡会社と譲受会社がマッチングし、M&A(事業承継)ができるとなると、それまで譲渡会社が積み上げてきたものを残すことができる点からも、社会にとってプラスになります。

そこで、国からM&Aをすすめる政策が打ち出されています。

ただ、M&Aを行う際に、気を付けるべき点がいくつかあります。

今回は、許認可を必要とする事業についてM&A(事業承継)を行う際の注意点を記したいと思います。

許認可を必要とする事業のM&A

先日のご相談

先日、とある事業を昨年(令和5年)譲り受けた、という会社の方からご相談がありました。
「M&A(事業承継)をうけた業務について、行政の実地調査が入ることになった。行政にM&A(事業承継)の報告をしていないが大丈夫でしょうか。」
という内容でした。

業務内容にもよりますが、原則として、許認可を要する業務についてM&A(事業承継)をする場合には、譲受会社が新たに許認可申請をする必要があります。

令和5年の法改正

しかし、M&A(事業承継)があった場合に新たに許認可申請をする必要があるとなると、企業としてはM&A(事業承継)へのハードルが高くなります。
そこで、M&A(事業承継)を進めたい国は、昨年、旅館業法、食品衛生法、理容師法、美容師法、クリーニング業法、興行場法、公衆浴場法などを改正しました。
この法改正により、改正法の範囲内にある事業を譲り受けた方は、新たに許認可の取得等を行うことなく、営業者の地位を承継することができるようになりました。

法改正前後での手続きの違い

上記の法改正により、M&A(事業承継)の契約の効力発生日によって必要な手続きが異なりますので、その点をご説明いたします。

旅館業法における事業譲渡手続き

◆法改正施行日である令和5年12月13日より前に事業譲渡契約の効力が発生している場合
 :旧法の原則どおり、営業許可申請をする必要があります。

◆法改正施行日である令和5年12月13日より後に事業譲渡契約の効力が発生している場合
 :事業譲渡契約の効力発生日前に、知事から事業承継承認を得ていないとき(※)
  ⇒営業許可申請をする必要があります。
 :知事からの事業承継承認を得たあとで、事業譲渡契約の効力が発生したとき
  ⇒事業承継承認申請で足ります(営業許可申請は不要)。

(※)都道府県知事の承認前に事業譲渡契約の効力が発生した場合、新規営業許可申請が必要となります。事業譲渡をお考えの事業者のみなさまはお気を付けください。
 

食品衛生法、理容師法、美容師法、クリーニング業法、興行場法、公衆浴場法における事業譲渡手続き

◆法改正施行日である令和5年12月13日より前に事業譲渡契約の効力が発生している場合
 :旧法の原則どおり、営業許可申請または開設届の提出をする必要があります。

◆法改正施行日である令和5年12月13日より後に事業譲渡契約の効力が発生している場合
 :譲渡承継の届出で足ります。

手数料や実地調査の有無、事前相談の必要性、必要書類などは、許認可の種類によって異なります。

まとめ

今回ご相談いただいたM&A(事業承継)は、令和5年12月13日より以前に契約の効力が発生していたことから、新規で営業許可申請をしなければならない事案でした。
事後的にはなりますが、早急に許可申請をする必要があります。

M&A(事業承継)を行う際には、許認可が必要な事業かを必ずご確認ください。
そして、許認可が必要な事業である場合には、譲渡会社が許認可を受けた際に提出・受領をした書類を引き継いでいただきたいと思います。

事業譲渡契約書の作成など、M&A(事業承継)を行う際には許認可以外にも注意すべき点がたくさんあります。
M&A(事業承継)をお考えの方は、弁護士、税理士等の専門家にご相談いただきたいと思います。





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