感染病対策って何をすればいいの?

障がい福祉

新型コロナウイルスの発生により感染症のおそろしさを知ったことから、社会全体として感染症対策に対する意識が大きく変わりました。
障害福祉サービスにおいては、利用者が安心して支援を受けるために、感染症対策が極めて重要です。感染症は、特に免疫力が低い利用者にとっては重篤な影響を及ぼす可能性があるため、適切な対策が求められます。
感染症対策としては、
①感染症の予防及びまん延を防止するための措置をとること
➁BCPを作成し、BCPに従った事前の対策、研修及び訓練(シミュレーション)を行うこと
が二本柱となります。

この記事では、これらの感染症対策の具体的な実施方法について、時系列に沿って説明いたします。

1 感染症発生前
 ✓感染症の予防及びまん延を防止するための措置
 ✓BCPを作成し、BCPに従った事前の対策、研修及び訓練(シミュレーション)を行う
 ✓感染者の対応を行う協定締結医療機関と連携し、対応を取り決める【入所系施設】

2 感染症発生後
 ✓「感染症及び食中毒の予防及びまん延の防止のための指針」に規定した発生時の対応を行う
 ✓BCPに従った緊急時の対応を行う
 ✓施設内療養を行う【入所系施設】

感染症発生前の対策

感染症の予防及びまん延の防止のための措置

感染症又は食中毒が発生し、またはまん延しないように、次の4つの措置を講じることが求められています。

  1. 委員会を定期的に開催し、その結果について従業者に周知徹底を図ること
  2. 感染症及び食中毒の予防及びまん延の防止のための指針を整備すること
  3. 年2回以上の研修を実施すること
  4. 年2回以上の訓練を実施すること

①感染対策委員会を定期的に開催し、その結果について従業者に周知徹底を図ること

まず、事業所における感染症及び食中毒の予防及びまん延の防止のための対策を検討する委員会(感染対策委員会)を設置します。
施設長、事務長、医師、看護職員、栄養士など幅広い職種のメンバーで構成し、構成メンバーの責務及び役割分担を明確にするとともに、専任の感染対策担当者を決めておく必要があります。この感染対策担当者は看護師であることが望ましいとされています。
感染対策委員会は、事業所の状況に応じ、おおむね3か月に1回以上定期的に開催するとともに、感染症が流行する時期等を勘案して、必要に応じて随時開催しましょう。

感染対策委員会は、テレビ電話等を活用して行うことができます。
また、事業所内の他の委員会と独立して設置・運営することが必要ですが、関係する職種、取り扱う内容が相互に関係が深いと認められる他の委員会等を設置している場合、これと一体的に設置・運営しても差し支えありません。

➁感染症及び食中毒の予防及びまん延の防止のための指針を整備すること

「感染症及び食中毒の予防及びまん延の防止のための指針」には、平常時の対策及び発生時の対応を規定します。

平常時の対策
・衛生管理(環境の整備、排泄物の処理、血液・体液の処理など)
・日常の支援にかかる感染対策(標準的な予防策、手洗いの基本、早期発見のための日常の観察項目など)

発生時の対応
・発生状況の把握
・感染拡大の防止
・医療機関や保健所、市町村における事業所関係課等の関係機関との連携、医療措置、行政への報告など

それぞれの項目の記載内容の例については、厚生労働省が作成している次のマニュアル、手引き及びひな形を参考にしていただければと思います。

ご参考
障害福祉サービス施設・事業所職員のための感染対策マニュアル
入所系マニュアル
通所系マニュアル
訪問系マニュアル
障害福祉サービス事業所等における感染対策指針作成の手引き
感染対策指針ひな形【標準版】(WORD形式)
感染対策指針ひな形【簡易版】(WORD形式)

③年2回以上の研修を実施すること

従業者に対する「感染症の予防及びまん延の防止のための研修」の内容は、感染対策の基礎的内容の適切な知識を普及・啓発するとともに、作成した指針に基づいた衛生管理の徹底や衛生的な支援の励行を行うものとします。
職員教育を組織的に浸透させていくためには、事業所が指針に基づいた研修プログラムを作成し、年に2回以上の定期的な研修を開催するとともに、新規採用時には必ず感染対策研修を実施することが重要です。
また、調理や清掃などの業務を外部へ委託する場合には、委託を受けて行う者に対しても指針が周知されるようにする必要があります。
そして、研修の実施内容については記録することが必要です。

研修の実施については、上記の感染対策マニュアルなどを活用し、事業所内で行うものでも差し支えありません。

④年2回以上の訓練を実施すること

平時から、実際に感染症が発生した場合を想定し、発生時の対応について訓練(シミュレーション)を年に2回以上定期的に行うことが必要です。
訓練では、感染症発生時に迅速に行動できるよう、発生時の対応を定めた指針及び研修内容に基づき、役割分担の確認や、感染対策をしたうえでの支援の演習などを実施することになります。
訓練はその実施方法は決まっていませんが、机上及び実地で実施するものを適切に組み合わせながら行うのがよいでしょう。

BCPを作成し、BCPに従った事前の対策、研修及び訓練(シミュレーション)を行う

BCPについては、「障がい福祉サービスの業務継続計画(BCP)」に記載しています。

BCPは「自然災害BCP」と「感染症BCP」をそれぞれ作成し、研修及び訓練(シミュレーション)を行う必要があります。
そのうち、感染症BCPにかかる研修・訓練は、上記の「感染症の予防及びまん延の防止のための研修・訓練」と一体的に実施することも可能です。

協定締結医療機関と連携し、対応を取り決める【入所系施設】

施設入所支援、共同生活援助、福祉型障害児入所施設においては、令和6年度報酬改定により、感染症対応力の向上が義務付けられています。

具体的には、
①感染症発生時に備えた平時からの対応として、感染者の対応を行う協定締結医療機関と連携し、新興感染症の発生時等における対応を取り決めるよう努めなければならない。
➁協力医療機関が協定締結医療機関である場合には、新興感染症の発生時等における対応について協議を行わなければならない。
とされています。

また、感染症発生時における施設内感染防止等のため、平時から一定の体制を構築している場合には「障害者支援施設等感染対策向上加算」で評価されることになりました。

障害者支援施設等感染対策向上加算(Ⅰ)
以下の(1)から(3)までのいずれにも適合する場合、1月につき10単位を加算する。
(1)第2種協定指定医療機関との間で、新興感染症の発生時等の対応を行う体制を確保していること。
(2)協力医療機関等との間で、感染症の発生時の対応を取り決めるとともに、感染症の発生時に、協力医療機関等と連携し適切に対応することが可能であること。
(3)医科診療報酬点数表の感染対策向上加算又は外来感染対策向上加算にかかる届出を行った医療機関が行う院内感染対策に関する研修又は訓練に1年に1回以上参加していること。

障害者支援施設等感染対策向上加算(Ⅱ)
医科診療報酬点数表の感染対策向上加算にかかる届出を行った医療機関から3年に1回以上実地指導を受けている場合、1月につき5単位を加算する。

感染症発生後の対策

「感染症及び食中毒の予防及びまん延の防止のための指針」に規定した発生時の対応を行う

上記「感染症及び食中毒の予防及びまん延の防止のための指針」で規定した「発生時の対応」に従って、行動します。

BCPに従った緊急時の対応を行う

BCPに基づいて行っている研修及び訓練(シミュレーション)に従って、対応を行います。

施設内療養を行う【入所系施設】

令和6年度報酬改定により、施設入所支援、共同生活援助、福祉型障害児入所施設において、新興感染症等の発生時に施設内療養を行う場合、感染拡大に伴う病床ひっ迫時の対応として、必要な体制を確保したうえで施設内療養を行うことに対し、適切な感染対策を行っていることなどの要件を設け、「新興感染症等施設療養加算」で評価されることになりました。

新興感染症等施設療養加算
入所者が厚生労働大臣が定める感染症に感染した場合に、相談対応、診療、入院調整等を行う医療機関を確保している入所系施設において、当該入所者に対し適切な感染対策を行ったうえで支援を行った場合に、1月に5日を限度として240単位を加算する。

おわりに

障害福祉サービスにおける感染症対策は、「BCPの作成及び研修・訓練」と、「感染症の予防及びまん延の防止のための措置」が大きな柱になります。
「感染症の予防及びまん延の防止のための措置」は、義務化はされていますが、未実施の場合でも減算対象ではありません。
しかし、感染症のリスクを最小限に抑え、利用者にとって安心な環境を提供することは、事業所にとって重要かつ必要なことです。
各事業所での具体的な状況に応じた対策を講じていきましょう。

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