身体拘束等の適正化の徹底を図るため、令和6年度の報酬改定により、身体拘束廃止未実施減算の減算額が見直されました。
事業所が行う適正化措置の内容にも変更がありました。以下に記載しますのでご確認いただければと思います。
身体拘束の適正化措置とは?
身体拘束廃止未実施減算は、身体拘束等の廃止・適正化のための取組みが適切に行われていない場合(以下の1から4に該当する場合)に、基本報酬が減算されるとするものです。
- 身体拘束等を行う場合であって、その態様及び時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由その他の事項を記録していない場合
※緊急やむを得ない理由については、切迫性、非代替性、一時性の3つの要件すべてを満たし、かつ組織としてそれらの要件の確認等の手続きを行った旨を記録しなければならない。 - 身体拘束適正化検討委員会を定期的に(1年に1回以上)開催していない場合
- 身体拘束等の適正化のための指針を整備していない場合
- 従業者に対し、身体拘束等の適正化のための研修を定期的に(1年に1回以上)実施していない場合
1 やむを得ず身体拘束等を行う場合に必要な事項を記録すること
原則として、本人または他の利用者の生命または身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体拘束等を行うことは許されません。
緊急やむを得ない場合が発生し、例外的に身体拘束等を行う場合には、その態様及び時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由を記録しなければなりません。
なお、令和6年度の報酬改定により、緊急やむを得ない理由については、切迫性、非代替性、一時性の3つの要件をすべて満たし、かつ、組織としてそれらの要件の確認等の手続きを行った旨を記録しなければならないことが要件になりました。
切迫性、非代替性、一時性の3つの要件をすべて満たし、「緊急やむを得ない場合」に該当するかどうかの判断は、担当の職員個人または数名では行わず、事業所全体としての判断が行われるように、あらかじめルールや手続きを定めておく必要があります。
2 身体拘束適正化検討委員会を定期的に開催すること
身体拘束適正化検討委員会の設置
「身体拘束等の適正化のための対策を検討する委員会」のことを「身体拘束適正化検討委員会」といいます。
事業所に従事する幅広い職種のスタッフで構成し、構成員の責務及び役割分担を明確にするとともに、専任の身体拘束等の適正化対応策を担当する者を決めておくことが必要です。
構成員としては、スタッフ以外にも第三者や専門家(医師(精神科専門医等)や看護職員)の活用に努めることとされています。
委員会は事業所単位ではなく、法人単位での設置・開催も可能です。テレビ電話等を使っての開催も認められています。
委員会は、少なくとも1年に1回以上は開催する必要がありますが、虐待防止委員会と一体的に設置・運営すること(虐待防止委員会において、身体拘束等の適正化について検討する場合も含む)も差し支えありません。
身体拘束適正化検討委員会の具体的な対応
身体拘束適正化検討委員会は、次のような対応をとることが想定されています。
- 身体拘束等について報告するための様式を整備すること
- 従業者は、身体拘束等の発生ごとにその状況、背景等を記録するとともに、①の様式に従い、身体拘束等について報告すること
- 身体拘束適正化検討委員会において、➁により報告された事例を集計し、分析すること。
なお、➁により報告された事例がない場合にも、身体拘束等の未然防止の観点から、支援の状況等を確認することが必要である。 - 事例の分析にあたっては、身体拘束等の発生時の状況等を分析し、身体拘束等の発生原因、結果等をとりまとめ、当該事例の適正性と廃止に向けた方策を検討すること
- 報告された事例および分析結果を従業者に周知徹底すること
- 廃止に向けた方策を講じた後に、その効果について検証すること
そして、委員会による対応状況については、適切に記録の上、5年間保存する必要があります。
3 身体拘束等の適正化のための指針を整備すること
「身体拘束等の適正化のための指針」には、次のような項目を定めることとされています。
- 事業所における身体拘束等の適正化に関する基本的な考え方
- 身体拘束適正化検討委員会その他事業所内の組織に関する事項
- 身体拘束等の適正化のための職員研修に関する基本方針
- 事業所内で発生した身体拘束等の報告方法等の方策に関する基本方針
- 身体拘束等発生時の対応に関する基本方針
- 利用者・障害児又はその家族等に対する当該指針の閲覧に関する基本方針
- その他身体拘束等の適正化の推進のために必要な基本方針
4 身体拘束等の適正化のための研修を定期的に実施すること
身体拘束等の適正化のための研修の実施にあたっては、身体拘束等の適正化の基礎的内容など適切な知識を普及・啓発するとともに、上記3で定めた指針に基づき、適正化の徹底を図ります。
職員教育を組織的に徹底させていくためには、指針に基づいた研修プログラムを作成し、年に1回以上の定期的な研修の実施に加え、新規採用時には必ず身体拘束等の適正化の研修を実施することが重要です。
また、研修の実施内容を記録することが必要です。
なお、事業所内で職員研修を行うときに、他の研修と一体的に実施する場合や他の研修プログラムにおいて身体拘束等の適正化について取り扱う場合は、身体拘束等の適正化のための研修を実施しているものとみなすことができます。
身体拘束廃止未実施減算の対象となった場合
身体拘束等の廃止・適正化のための取組みが適切に行われておらず、上記1から4の運営基準を満たしていない状況が確認された場合には、次の期間減算されることになります。
減算期間:
運営基準を満たしていない状況が確認された日の翌月から、改善が認められた月までの間
減算対象となった事業所は、都道府県等に対して速やかに改善計画を提出し、3月後に改善計画に基づく改善状況の報告を行うことが求められています。
身体拘束廃止未実施減算について取り上げてみました。
今一度、事業所で身体拘束等の廃止・適正化のための取組みが適切に行われているかどうかをご確認いただければと思います。