令和6年4月1日より、安全に関する事項についての計画(安全計画)を策定することが義務化されました。
義務化されたとはいえ、未策定減算などはありません。
しかし、子どもたちの安全を守ることは何より大事なことです。
ここでは安全計画の策定についての概要を説明いたします。
対象となるのは次の4つの事業所です。
【対象】 児童発達支援(児童発達支援センターを含む。)
医療型児童発達支援
放課後等デイサービス
障害児入所施設
安全計画の策定
安全計画は、安全確保に関する取組みを計画的に実施するため、各年度において、当該年度が始まる前に、事業所の設備等の安全点検や、安全確保ができるために行う指導等についての年間スケジュールを定めることとされています。
具体的な安全計画のイメージについては、「事業所安全計画例」を参考に作成してください。
また、作成するにあたっては「いつ、何をなすべきか」を「事業所等が行う児童の安全確保に関する取組と実施時期例」などを参考に、必要な取組みを安全計画に盛り込むこととされています。
安全確保のための取組み
児童の安全確保のために行うべき取組みについては、他のガイドラインやマニュアル等に基づいてすでに実施されている取組みがあることが想定されることから、それら以外のものとして以下のものが考えられます。
- 安全点検について
- 児童・保護者への安全指導等
- 実践的な訓練や研修の実施
- 再発防止の徹底
- 地域や関係機関等との連携
- 安全管理に関する組織的体制
これらの取組みをひとつずつ確認しましょう。
1 安全点検について
事業所・設備の安全点検
- 事業所等の設備等(備品、遊具等や防火設備、避難経路等)定期的に、文書として記録したうえで、改善すべき点を改善すること
- 点検先は事業所内のみならず、散歩コースや公園など定期的に利用する場所も含むこと
【留意点】
- 設備等の安全点検については、安全計画やマニュアルの策定時のみならず、少なくとも毎学期1回(年3回)以上の頻度で定期的に点検を行うことが重要である。
- 安全点検の際には、事前に、活動や事業所等の状況に応じたチェックリストを活用し、一人ではなく複数名で点検することが望ましい。
- 安全点検の結果、危険箇所が見つかった場合には、すぐに対策について話し合い、改善策を講じるとともに、日ごろから、事業所等や活動の中で、安全が確保されるよう環境整備を進めることも必要である。
マニュアルの策定・共有
- 通常支援時において、児童の動きを常に把握するための役割分担を構築すること
- リスクが高い場面(午睡、食事、プール・水遊び、事業所外活動、バス送迎)での従業者が気を付けるべき点、役割分担を明確にすること
- 緊急的な対応が必要な場面(災害、不審者の侵入、火事(119番通報))を想定した役割分担の整理と掲示、保護者等への連絡手段の構築、地域や関係機関との協力体制の構築などを行うこと
- これらをマニュアルにより可視化して常勤職員だけでなく非常勤職員、補助者も含め、事業所等の全従業者に共有すること
【留意点】
- 定期的な見直しとあわせて、緊急時に職員が適切に対応できるよう、平時からマニュアルの内容の確認や実践につながる訓練等の実施を行うことも必要である。
2 児童・保護者への安全指導等
児童への安全指導
- 児童の発達や能力に応じた方法で、児童自身が事業所等の生活における安全や危険を認識すること、災害や事故発生時の約束事や行動の仕方について理解させるよう努めること
- 地域の関係機関と連携し、交通安全について学ぶ機会を設けること
保護者への説明・共有
- 保護者自身が安全にかかるルール・マナーを遵守することや、バスや自転車通所の保護者には、交通安全・不審者対応について児童が通所時に確認できる機会を設けてもらうことなど児童が家庭で安全を学ぶ機会を確保するよう依頼すること
- 保護者に対し、安全計画及び事業所等が行う安全に関する取組みの内容を、契約時等に説明・共有すること
- また、児童の安全の確保に関して、保護者との円滑な連携が図られるよう、安全計画及び事業所等が行う安全に関する取組みの内容について、公表しておくことが望ましいこと
3 実践的な訓練や研修の実施
- 避難訓練は、地震・火災だけでなく、地域特性に応じた様々な災害を想定して行うこと
- 救急対応(心肺蘇生法、気道内異物除去、AED・エピペン®の使用等)の実技講習を定期的に受け、事業所内でも訓練を行うこと
- 不審者の侵入を想定した実践的な訓練や119番の通報訓練を行うこと
- 自治体が行う研修・訓練やオンラインで共有されている事故予防に資する研修動画などを活用した研修を含め、研修や訓練は常勤職員だけでなく非常勤職員も含め、事業所等の全従業者が受講すること
【留意点】
- 安全計画やマニュアルを体得できるよう、例えば読み合わせをする、指差し確認をする、ロールプレイング等の実践的な研修や訓練を行うなどといった取組みが重要である。
4 再発防止の徹底
- ヒヤリ・ハット事例の収集及び要因の分析を行い、必要な対策を講じること
- 事故が発生した場合、原因等を分析し、再発防止策を講じるとともに、上記1の点検実施箇所やマニュアルに反映したうえで、従業者間の共有を図ること
5 地域や関係機関等との連携
- 事故発生時の協力体制や連絡体制を整えること
- 地域住民や地域の関係者・関係機関との関係づくりに日ごろから努めること
【留意点】
- 行方不明時の捜索、災害時の協力等、地域の人など職員以外の力を借り、こどもの安全を守る必要が生じる場合もあることから、事故発生時の協力体制や連絡体制を整えるとともに、日ごろから顔の見える関係づくりを進め、緊急時の協力・援助の依頼についても検討しておくことが重要である。
6 安全管理に関する組織的体制
- 安全管理委員会を設置し、責任者・担当者を配置すること
【留意点】
- 事故の発生防止は組織で対応することが重要であり、事業所の管理者等によるリーダーシップのもと、組織的に対応できる体制を進めることが重要である。
安全計画の策定後
- 策定した安全計画について、管理者等は、実際に児童に支援を提供する従業者に周知するとともに、研修や訓練を定期的に実施しなければなりません。
- また、管理者等は、利用する児童の保護者等に対し、児童の安全に関する連携を図るため、事業所での安全計画に基づく取組みの内容等を通所開始時等の機会に説明を行うなどにより周知するとともに、ホームページなどで公表することが望ましいです。
- 管理者等は、PDCAサイクルの観点から、定期的に安全計画の見直しを行うとともに、必要に応じて安全計画の変更を行います。
まとめ
令和6年7月4日付で、「障害児支援の安全管理に関するガイドライン」が発表されています。このガイドラインでは、事業所等が安全計画やマニュアルの作成を含む事故防止のための安全対策を講じるうえで参考となる基本的な内容がとりまとめられています。
こちらを参考にして、各事業所に適した形で安全管理に取り組むことで、事故をできるだけ減らし、子どもの安全を守ってまいりましょう。